- 導入──「安い方が得」教に囚われた現代人
かつて、住宅は“人生最大の買い物”だった。いまや“最大の博打”である。
「相見積もり」という言葉が日常語として通用するようになったのは、たぶんバブル崩壊後、リクルートが家探しを「比較サイト」化してからだろう。住宅リフォームという“命の安全保障”に関しても、同じことが起きている。
「3社から見積もりを取りましょう」「競争させて価格を下げましょう」──まるでセール品のTシャツでも探すようなノリで、家の“命綱”を選ぶ人々。
彼らは知らない。「比較」ではなく、「選別」されていることに。
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- 相見積もりの心理学──“損したくない”が損を呼ぶ
人間は、「損をすること」を極端に嫌う。
これをプロスペクト理論(Prospect Theory)という。ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンが提唱したこの理論によると、人間は利益を得る喜びよりも、損失を避ける不安に敏感なのだ。
つまり、「A社とB社、見積もりに30万円の差がある」と聞くと、人は内容より「30万円安い方が得」と思ってしまう。
しかし、そもそもその30万円、何が省かれているか、誰も見ていない。
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- 地獄のメカニズム──“比較”が“選別”になる瞬間
さて、相見積もりの現場を覗いてみよう。
• お客様:「とりあえず、何社かで見積もり取りたいので…」
• 業者A(職人気質):「なるほど。じゃあ現地調査から丁寧に…」
• 業者B(営業特化):「弊社、相見積もり慣れてます。値引き得意です」
• 業者C(ブラック企業):「安くしますよ、なんでも。職人は外注ですが」
3社の中で、「一番安いのを選ぶ」と決めている顧客に、まっとうな業者は去っていく。“価格で選ぶ人”は、価格で選ばれる。
結果、相見積もりとは名ばかりの、“安かろう・悪かろう・後悔しよう”地獄の入口となる。
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- 業者の本音──「相見積もり?ああ、また時間の無駄か」
リフォーム業界の職人・営業の共通認識はこうだ:
• 「相見積もり中の客ほど、ややこしい」
• 「値段しか見てない人は、工事中にクレームを言いがち」
• 「自分の仕事を理解しようとしない人とは、信頼関係が築けない」
真面目な業者ほど、“相見積もり”と聞いた瞬間に“撤退”を考える。つまり、優良業者から先にフェードアウトしていくのがこの世界の真理。
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- 「安さ」に潜むリスク──その見積もり、何を削っている?
よくある話だ。
A社:150万円(下地補強・防水・10年保証つき)
B社:120万円(材料は同等品、保証5年)
C社:98万円(「大丈夫ですよ〜」と言うだけで詳細なし)
違いは、施工手順、使う材料、職人の質、アフターフォロー。見積書には書かれない“信用”の差が、価格に表れている。
でも人は見ない。見ても読まない。読んでも理解しない。
結果、「安く上がったけど、2年で雨漏り」「保証がないから泣き寝入り」という地獄絵図が完成する。
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- 成功者の共通点──「相見積もりをしなかった人々」
不思議な話だが、満足度が高いリフォームの共通点は「信頼ベースの契約」だという。
• 知人の紹介
• 地元で評判の業者
• 相談時に丁寧な説明を受けたから決めた
こういう人たちは「一番安い」ではなく、「一番信頼できる」業者を選んでいる。そしてその選択が、長期的には“最も安上がり”になる。
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- 「比較される」という罠──業者も客を選んでいる
近年は、優良な業者ほど“客を選ぶ”時代に入っている。
• 無理な値引きを要求する人
• 他社の見積もりを盾に交渉してくる人
• メールだけで値段を聞いてくる人
こうした顧客は「将来のクレームリスク」としてフラグが立つ。
リフォームとは信頼の共同作業。業者も「この人と一緒に仕事をしたいか?」を見ている。
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- 「見積もり」に何を求めるか──“値段”ではなく“意図”を読み取れ
プロの見積書には、哲学がにじむ。
・現場の癖をどう見ているか
・将来的なトラブルをどう予防しているか
・保証や点検の設計思想はあるか
これらを読み取れずに、「数字だけ」で比較するのは、文学を「字数」で比べるようなもの。
見積書はラブレターである。値段だけ見るのは、「給料いくら?」で結婚相手を選ぶような話だ。
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- 解決策──「見積もりを比較しない方法」もある
相見積もりの地獄から脱出するには、発想を変える必要がある。
- 信頼できる1社に、じっくり相談する
- 内容を理解してから、価格を見る
- 「値段は高くても納得できる理由があるか」を聞く
さらに効果的なのは、「自分の希望や不安を言語化すること」。伝え方一つで、業者の対応は劇的に変わる。
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- 結論──「家」は命を守る場所。“値段”より“人生”を選べ
最後に言っておこう。
「安く済ませたのに後悔した」という声は山ほどあるが、「高かったけど後悔した」という声はほとんど聞かない。
なぜなら、信頼と納得があったからだ。
家は、モノではない。家は、「未来の安心」そのものである。
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おわりに:家の工事に必要なのは、金額よりも“共感”です。
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